第16回ONE×ONE BUS レポート【テーマ:共感】
皆様、こんにちは😃
暑い日が続いていますが、今回は少し前(2023年3月)に開催された「第17回ONE×ONE BUS」について、営業人材開発部 加藤から報告します✨
お仕事の合間に、ぜひご一読ください🙇♂️
【ONE×ONE BUSとは】
株式会社熊谷組、AGC株式会社、NECネッツエスアイの3社で開催している、どなたでも参加可能な異業種交流会です👏
この会は、いい社会・いい会社、魅力的な人づくりを目指し、多くの人々が抱える共通の悩みや普段当たり前すぎて考えることのないことに対して、真剣に議論を重ねます。そして、社内だけでは生まれることのない新たな気づきや発想、そして、社内社外を問わない繋がりを生むことを目的としています✨✨✨
毎回、様々な分野でご活躍されている方々にご登壇いただき、そのお話を聞いて参加者がテーマに対する議論をしています。
2016年から始まったこの会は、これまで延べ2,100名もの方にご参加いただいています🙌🙌
今年度は「サステナビリティ 持続可能性」をメインテーマとして掲げ、既に多くの方にご参加いただいています😎
今回のテーマは「リセット」
高山 千弘 氏(エーザイ株式会社 ナレッジクリエーション・フェロー)にご登壇いただきました👏
【高山 千弘 氏について】
東京大学卒業後、1982年にエーザイ(株)入社。
英国にてMBA(経営学修士)、米国にてPh.D.(医学博士)を取得。
その後、日本・米国においてアルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」の臨床試験、承認申請やマーケティング、認知症社会啓発活動に携わり、hhc(human health care)理念をグローバルの隅々にまで浸透させる活動を展開している。
経営学の世界的権威である野中郁次郎氏に師事し、エーザイ企業理念「患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を考え、そのべネフィット向上に貢献する」の実現のために、野中氏の知識創造理論=SECIモデルの全社実践を強力に推進。
【講話内容】
野中郁次郎先生が提唱し、NECネッツエスアイにおけるオフィス構築の基となった知識創造理論(SECIモデル)。その知識創造理論を活用し、ソーシャルイノベーションを起こし続けるエーザイ革新の推進者であり、真のSDGs、ESGは慈善ではなく実利であることを、組織・会社の枠を超え、体現している高山先生に真のサスティナブル経営、共感を通じて、これからの人と社会の在り方について学ぶ。
【講話内容 一部要約】
1.新型コロナウィルスによる社会転換
新型コロナウィルス感染症パンデミックは、人類史において天然痘やペスト、スペイン風邪に次ぐ4番目に大きなパンデミックであったと言われています。大規模パンデミックは、世界を大きく変える程の影響力を持っており、かつてのスペイン風邪はヨーロッパ諸国の没落とアメリカの隆盛をもたらしました。それでは、今回のパンデミックがもたらす変化や意味とは何なのでしょうか。
それを語るには、先ず、近年の2つの社会発展モデルについて説明する必要があるでしょう。
Ⅰ.価値観の制約による社会発展(20世紀型モデル)
これは、個人を集団内(国家や組織など)における器官として扱い、価値観を“等質”なものに強制することで、効率化を図るものです。言わば、「国家・社会・組織中心主義」と言えるでしょう。
Ⅱ.価値観の解放による社会発展(21世紀型モデル)
対して、こちらは個人の多様な価値観を“開放”し、集団を価値観の実現器官として扱っています。多様な価値観は、共感によって加速され、更に多様な価値観の実現を促進するのです。こちらは言わば、「人間・個人中心主義」と言えるものでしょう。
今回のパンデミックは、これまでの閉じた社会(20世紀型モデル)から、開かれた社会(21世紀モデル)への転換をもたらす意味があったのではないかと高山氏は語ります。従来の閉じた社会では、周囲と等質であることを善しとして、内在的な自己に対し蓋をする必要があったのです。
2.外在的自己と内在的自己
これまでの哲学者たちは、皆一様に同じ主張をしていたのでは、と高山氏は語ります。それは、人間の内にある外在的自己と内在的自己の存在です。
Ⅰ.外在的自己(Ego)
権力が欲しい、評価されたい、地位が欲しいといったエゴ
→ 表出化した自分自身
Ⅱ.内在的自己(Self)
誠実さ、高潔さ、真摯でありたい内定背景
→ 内在的な自分自身
我々は、資本主義社会の中で競争に負けないよう、外在的自己にならざるを得ませんでした。そして、そうした外在的自己は結果として弱者を排他してきました。一方、内在的自己は人間の内に宿る真の自分自身を指します。20万年前より興きた人類の歴史は、150人という集団から始まりました。そして、知性に目覚めた人間は命の有限性(命の尊さと儚さ)への畏怖に依って、「愛」や「共感」をベースとしてその歴史を紡いで来ました。そして我々もまたその延長線上にいるのです。
現在、社会は「開かれた社会」へと移り変わりつつあります。これまでの人類史において、「開かれた社会」が一時的に実現したと高山氏は言います。それは、釈尊やイエスやマホメッドといった英雄の登場によるものでした。しかしながら、そうした英雄の出現を待っていては「開かれた社会」の実現には何百年も掛かります。そこで、私たち一人ひとりが内在的自己を表出(ないしは気づく)することが「開かれた社会」の実現の鍵となるのです。
3.大加速時代からスローダウン社会へ
今進んでいる社会のスローダウンは、ここまでの大加速時代を考えさせられるものであったと言えます。すなわち、資本主義は行き過ぎた大加速時代であったと、私たちは胸に刻まなければなりません。資本主義は創造的破壊を礼賛し、地球環境を破壊し、格差社会を生みました。
こうした資本主義による犠牲者に私たちがどのように共感するのか。“個”を閉じてしまっている私たちがすべきことは、アンラーニングです。そして、そのために私たちは資本主義の犠牲者の方々に直接会うことによって、“共感”を得る必要があるのです。
現代社会は、経済とテクノロジーによって、物質的貧困を社会から失くす段階を既に終えており、経済原理の中に人間性原理(ヒューマニティ)をロジックとして埋め込む必要があります。そして、この人間性原理をロジックとして搭載した企業が続々と登場することによって、社会は変わることができます。高山氏はその新たな社会(ポスト資本主義社会)を実現するべく、エーザイという企業で長きに渡り尽力されているのです。
4.「世の中変わります。あなたは変われますか?」~エーザイの役割~
「会社は社会的な善を成すために存在している。(中略)社会的な善を最も効率よく、連続的に実現できる集合体が企業だと信じている」
こちらは、エーザイCEO内藤氏の言葉です。従来、製薬会社の最大の顧客は、医者でした。しかし、内藤氏はそれを、「患者様とその家族こそが最大の顧客」であり、「医者はパートナー」であると定義し、パートナー(医者)と一体になり、顧客の喜怒哀楽を支えていくことを企業理念としました。
この「喜怒哀楽を支える(考える)」は、内藤氏がエーザイの現企業理念のみならず、株主総会(2005年)にて定款にも盛り込まれました。(企業理念を定款に取り入れた企業として世界初)このことが意味すること、それはエーザイという企業が、患者様(顧客)満足の増大こそを希求し、利益追求を目的としない(結果としての利益を享受する)ということです。そして、株主にもそれを理解していただくことを求めているのです。
「企業が生活者に対して、サービスやプロダクトを提供することで利益を得る」これが資本主義です。一方で、「生活者に共感し、明日に希望を持って生きていくためのサービス・プロダクトを提供する」これが内藤氏、そしてエーザイが掲げる企業の役割なのです。
多くの企業は、「顕在化する」顧客の要求を満たし、満足させることは可能である一方、「潜在化」する顧客の要求を満たすことは困難であると高山氏は語ります。その理由は文字通り、要求が「潜在化」していることにあります。顧客も自身の内にある要求に気づけていないのです。では、どのようにしてその要求に気づき、満たすのでしょうか。
先ず必要なことは、「共同化(共に同じ時間を過ごす)」です。そしてそこから生まれる「共感」によって要求への示唆を見出すのです。
エーザイでは、会社を挙げて日常的な「共同化」に取り組んでいます。
様々な困難を抱える患者様と共に過ごすことで、「共感」を得るのです。
5.知識創造理論~イノベーションへ~
「我々は語れること以上のことを知っている(ボランニー,1958)」
知識には、暗黙知と形式知があると言います。形式知とは私たちの表出化している知識を指し、今私たちがビジネスで用いている知識の殆どがこの形式知に分類されます。一方、暗黙知とは私たちに内在化(潜在化)した知識を指します。「全ての知識は暗黙知に根差す」と言われ、私たちの持つ知識の殆どは暗黙知に分類されます。しかし、私たちが普段用いる形式知は、持っている知識全体の数%に過ぎません。
患者様の抱えるニーズ(黙知)は語られません。それを表出化(形式知)させるために、用いられるのがSECIモデル(知識創造理論)ならびに、それを回すこと(SECIスパイラル)です。
高山氏の語るSECIスパイラルは以下の通りです(要約)。
(1)患者様との「共同化」によって暗黙知を蓄積
(2)対話・内省を経て暗黙知を言語化ないし図像化することで「表出化」。暗黙知を形式知へ(ニーズの把握)。
(3)表出した形式知を関連する概念と「連結化」し、モデル化・ナラティブ(物語)化することで、新たな形式知を育む
(4)生まれたモデル・ナラティブを実践し、新たな暗黙知(経験等)を自身に蓄積する「内面化」
(5)(1)「共同化」へと戻り、新たな形式知へ。
従来用いられて来た、PDCAサイクルは「効率化」といった側面においては有用でした。しかし、PDCAサイクルはあくまで形式知のみに留まっていると高山氏は語ります。私たちがイノベーションを起こすには暗黙知が必要であり、そのためには、PDCAからSECIへ移行することが求められるのです。
「人は、6歳までに人生脚本を書き上げる。その人生脚本によって6歳までにどのような人生を生きるのかを決めてしまう(エリック・バーン)」
この言葉が意味すること、それは、人間の殆どが人生の「目的(パーパス)」を見つけられずにその生涯を終えてしまうということです。
即ち、私たちはこの人生のどこかで、「目的」を見つけ自身の人生脚本を書き直す必要があるのです。
人は皆ライフパーパスを持って生まれます。しかし、そのパーパスは潜在意識の中にあり、表出のためにはコーチング等のワークに取り組む必要があります。そして、個々人がライフパーパスを見出すことは、企業がパーパス経営を実現する上で、必要不可欠です。これは、社会善としての企業パーパスを実現するのは、あくまで社員一人ひとりであるということに起因します。即ち、社員のライフパーパスと企業パーパスとの重なりが重要であり、個人のライフパーパスの実現が必要なのです。しかし、多くの個人が自身ライフパーパスを見つけられていないのが実態です。
では、ライフパーパスをどのようにして見つけていくのか。ハイデガーの述べる「良心の呼び声」が、ライフパーパスを見つけるチャンスであると高山氏は語ります。「良心の呼び声」は「人との出会い」によってもたらされ、「素晴らしい先生」やあるいは「両親」など人によって様々ですが、人生の中での素晴らしい出会いが、自身のライフパーパスを見出すきっかけとなり得るのです。
そして、ライフパーパスを見出す上でもう一つ重要なこと、それはここまででも述べてきた「共同化」です。クライエント中心療法の生みの親である心理学者カール・ロジャースは、共同化に必要な共感の具体的なプロセスを定義しています(画像参照)。
上画像(「共感のプロセス」)における、⑨「開かれた態度を保つ」とは即ち「心を開くこと」を意味します。病気や障害を抱えている方は「弱さの力」を持っていると高山氏は語ります。
その力によって彼らは「心を開いている」のです。
そして、彼らが心開いているからこそ、私たちは彼らに心を開くことで共感することができ、気づきを得られるのです。
また、相互に共感し合っている社会のことを、「共存在社会」と呼びます。
これは言うなれば「開いた社会」です。
この社会では、
1)人々が自己の〈いのち〉を居場所に与贈し、
2)居場所の〈いのち〉が自己組織的に生成されていきます。
3-1)そして今度は居場所から人々へと〈いのち〉が働きかけ、
3-2)居場所の〈いのち〉が人々を包み込み、4)人々と居場所、人々同士の〈いのち〉が繋がる場が形成されると言います。
言わば〈いのち〉の与贈循環がなされるのです。
そして、高山氏はこの実践・実現に向け、様々な取り組みをされているのです。
取り組みや、その他講話詳細ついては、本記事下部の録画アーカイブよりご覧いただけます(NECネッツエスアイの社員に限る)。
非常にボリューミーな内容となっておりますが、是非一度ご覧ください。
【参加者の声(一部抜粋)】
「このようなセミナーは初めての参加でした。私は新入社員でまだまだ分からないことばかりです。ですが、”だからこそ”まっさらな何でも受け止める土台もあるのだと改めて感じました。個を尊重し、認め合っていく世の中では他人の事も自分の事のように受け止め、一緒に高め合っていけるよう、共感を大切にして成長していこうと思うことができました。ありがとうございました。」
「今まで、共感、共鳴について深く考えたことがありませんでした。それらが何をもたらしこの時代にどう影響していくのか、私が未熟な為全てを理解することはできませんでしたが、少し分かった気がします。小さい頃から人と違うことにコンプレックスを持ち、いつからか普通に憧れて生きるようになりました。しかし今回のお話を聞いて、人と違ってよいのだなと思うことができました。むしろ人と違うことに誇りを持てそうな気がします。」
【NECネッツエスアイの社員向け】
当社社員の方は、下記URLより録画アーカイブをご視聴いただけます。
URL; https://onenec.box.com/s/rd2fxkj9o40cz15iydfx7jxi4rotq7d4
是非、一度ご覧ください🙇♀️🙇♂️
ここまでお読みいただきありがとうございました✨
以上、営業企画本部人材開発部 加藤がお送りいたしました❗❗